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2008年4月28日 (月)

セミナー、”応用編”。

先週の木曜日に、“FX入門・基礎編”の第二弾として、“応用編”なるセミナーを開催した。
“基礎編”の“応用編”とは、これはちとややこしいし、両方とも参加される方の人数は少ないであろうから、この“応用編”で何を話そうかとちょいと迷った。
結局は、前回のおさらいをして、その後はブログで募集したご質問にお答えすることにした。
今週の“週刊・独り言”は、この二つのセミナーで何を話したかをまとめてみたいと思う。
中・上級者と、セミナーにご参加なさった方々はご覧になる必要はありません。

*前回の“基礎編”のおさらい。
-如何に、安全かつ効率よくFX投資をするか?
 ・財務省がFX業者に与える免許は、その業者の安全性を保障するものではない。
・ スプレッド、手数料は業者を選定する際の重要な要素であるが、執行がうまくいかないと意味は無い。(いざという時に、約定出来るか?)
・ システム安定の重要性。
-自分の投資目的は何か?
・ 純粋なスワップ・ポイント狙い?
高金利通貨ならどれでもいいのか?
適切なレバレッジはあるのか?
円安時に利喰う必要は無いのか?
円高時に損切る必要は無いのか?
・ 純粋なCapital Gain.狙い?
どの通貨が一番妙味があるのか?
適切なレバレッジはあるのか?
利喰い・損切りのタイミング。
本業との両立。(一日中、値動きを追うことが出来るのか?)
・ その両方?
長期投資で行くか?(スワップ・ポイント狙い?) 円売りだけ。
短期投資で行くか?(Capital Gain.狙い?) 円も買おう。
・ 目標をどう定めるか?
100万円の投資資金を150万円に出来るか?
年率10~12%のリターンでは不服か?
-損切りの重要性。
・ チャンスは一月20回ある。
・ 損切りをすれば、驚くほど相場がよく見える。
・ 評価損と実現損は同じもの。
-利喰いの難しさ。
・ 早過ぎると、大魚を逸する。
・ 遅過ぎると、絵に描いた餅になる。
・ 自分の損益管理をしっかりする。


* ご質問にお答えした“応用編”。
・(トレンドとは何か?)
 トレンドとは、相場の方向性を示すもの。昨年までは、非常に明らかな円安トレンドであったが、大きく転換した。果たして、本物の円高トレンドになったか?
 トレンドがはっきりしない時は、レンジ取り引きとなる。そしてそのレンジは、必ず破られる。
 95円台を付けた後、ドルが急激に戻したが、再び円安トレンドに戻るとは思わない。
何れ、92円を切るであろうとの相場観は変えていない。

・(あれだけ悪い結果が出ているのに、ドルが上昇傾向であるが、現在の市場の見方はどうなっているか?)
  いつも木曜日に会う現役ディーラーの多くが、依然としてさらにドルが下がると思っている。現在は、金融システム安定に市場の目が向いているが、アメリカ実体経済の悪さはこれから露呈すると思われ、ドルの下落傾向は変わらない。
  ただ、今回のG7での声明文には敬意を払うべきで、ユーロの上昇とドルの下落のピッチは穏やかなものになる可能性がある。

・ (ついついレバレッジを掛け過ぎたり、損切りを躊躇してしまうが、短期トレードと中・長期トレードの違いや、損切り、レバレッジの掛け方、資金に見合った取り引きなどを教えて欲しい。)
そもそも短期トレードと中・長期トレードの違いとは何か?
さ・さっと短期にCapital Gain.を狙う積りが、ついつい損失が出て切るに切れなくなって、仕方なく中・長期のトレードになってしまっているのではないか?
基本的には、中・長期のトレードは投資目的の取り引きであるべきで、多少の相場の動きで動揺するようなポジションを持ってはいけない。
多くの人が、レバレッジの掛け方を間違えている。
スワップ・ポイント狙いのポジションに大きなレバレッジを掛けるのは、借金をして預金をするようなものである。
“下がったら売り。”、“上がったら買う。”という、ここぞという時にこそ、大きなレバレッジを掛けるべきである。
資金に見合った取り引きとは、ずばり分相応のポジションしか取らないということ。
相場の上げ下げで、ドキドキ・ハラハラするような無理はしない。
財力と胆力があれば、自己責任で何をやっても良かろうが、中々そうは行かない。

・ (ドル・円をショートにするとスワップがマイナスになってしまうが、それは気にしないのか?)
  勿論、気にしない筈は無いが、要はCapital Gain.=(ドルが下落する事によって得る為替差益)が、支払うスワップ・コストより大きければ、それでいいではないか?
  金利差が年3.65%だとすると、毎日0.01%で、一月約0.3%のスワップ・コストを支払わなければならないが、もし一月で1%もドルが下れば(例えば、110円から108.90まで下れば)その方が利益が多いではないか?
   多くの個人投資家が昨年までの円安相場に慣れてしまって、スワップ・ポイントを得ることだけにしか目が向かなくなっている。

・ (資料などを作る際にはタイトルを“理想のトレード”などに変えれば、初心者の皆   さんが自発的にデモでじっくり試してみようと思うのではないか?)
“理想のトレード・モデル”なんて、有りませんって!
そもそも、モデルどおりに相場は動かない。
閉めてみて、利益が上がれば“いいトレード”。
損失を被れば、“悪いトレード”。

・ (FXで利益を上げながら、家族を養う。=(FXで生計を立てる。)ことを夢見てい  ますが、如何でしょうか?
  お止めなさい。 無理です。
  短期間は上手く行くかも知れないが、家族を養うほどの利益を恒常的に上げ続けるのは至難の業だと思う。
  手元に5億円くらい余裕資金が有って、それを自由に使ってもいいのなら年間2千万円くらいの利益を上げることが出来るかも知れない。

・ (塾長はテクニカル分析をしないそうですが、どうしてですか?)
理由は簡単で、テクニカル分析、特にチャートは過去の相場を見ながら将来の動きを予測するもので、突発的な外的要因に全く無力だからである。
典型的な例は、過去の相場の動きに関係なく行われる為替介入や、9.11などの地政学的リスクが発生した時。
 但し、テクニカル分析を使っている人達が多いのも事実であり、彼らの意見を尊重することは大事だと思う。

まだ幾つかのご質問があったが、今回はこれくらいで終わりと致します。
まあ、普段いつも言っていることばかりなので、“またかよ!”と思われる方々も多かろうが、ご容赦!

世の中、ゴールデン・ウィークで浮き浮きしているが、相場は相変わらず難しい。
余り、無理をしないで、“Happy Golden Week !”

          ゴールデン・ウィーク中に、なーーんも約束が無い塾長。

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2008年4月21日 (月)

痘痕(あばた)も靨(えくぼ)

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”痘痕(あばた)も靨(えくぼ)”

恋する者の目には、相手のあばたでもえくぼのように見える。ひいき目で見れば、どんな欠点でも長所に見えるということのたとえ。
      大辞泉


先週、米主要金融機関の1~3月期の業績発表があり、何れも赤字や減益決算となり、リスク資産の削減や大幅なリストラを迫られることとなりそうである。
これらの発表を受けての株式・為替・債券市場の反応は大変興味があるものであった。
株は買われ、ドルも買い戻され、債券は売られて利回りは上昇した。
その背景は、“元々、決算の数字は悪いと思っていた。これで、悪材料が出尽くした。”と市場が反応したらしい。
へーえ、そんなものかなあ?
悪いものは悪いのではないのか?
人員削減などのリストラは間違いなく将来的な経費の削減となり、その金融機関にとっても、また市場にとっても“いいニュースだろうな。”とは思うが、リスク資産に限らず、バランス・シート改善のための“通常の資産”の削減が進めば、企業に対する貸し出しの減少、個人に対する住宅・自動車・クレジットカードなどへの与信枠の締め付けなどにより、米国実体経済に対する悪影響は計り知れないものになるのではなかろうか?
以前、市場の関心は“マクロから金融”にシフトしており、将来起こるであろう景気減退=(マクロの悪化)よりも、現在の信用不安の減退=(金融安定)を評価しているのであろうか?
まさに、痘痕(あばた)があるのは歴然としている=(今もひどいし、もしかして将来的にもまだ不安であるが)のに、靨(えくぼ)のように見える=(一時心配された、金融機関の連鎖的な倒産とか、吸収・合併の不安が殆ど無くなった。)ということか?
まあ、人間、好きになってしまえば盲目的になるらしいから、仕方ない。
今は、何を言っても駄目!
Leave them alone.=(放っておきなさい。)
でも、反対に一旦嫌いになったら、怖いことになるのではなかろうか?
元々靨(えくぼ)ではなくて、痘痕(あばた)だったんだから、“お前、あっちへ行け!”なんてことになってしまう可能性は大ではなかろうか?

先週、そして今週と矢継ぎ早に上の米主要金融機関や、欧州の有数の大手金融機関の資本増強に手を貸した、Sovereign Wealth Fund.=(政府系ファンド)が来日している。
塾長もそのファンドの一つに今日の午前11時から会うことになっているが、彼らの狙いは何であろうか?
我々の感覚で言えば、“日本の金利は低いし、株価はとんと上がらない。それに、あんなに政治がゴタゴタしている国の通貨なんて買ってどうするの?”という気がするが、彼らが目指す健全なポートフォリオ・マネジメント=(資産運用)とは、そんなに簡単なものではない。
彼らは数年のスパンでの運用を考えているから、短期的な相場の文(あや)には余りバタバタしない。
昨年までのドル安&ユーロ高の要因の一つは、中央銀行や政府系ファンドがドルからユーロへのシフトを行ったことである。
彼らは、依然としてドルは減価すると思っているが、昨年までのようにユーロをドルのAlternative.=(代わりとなるもの)として買い続けるということは無いかも知れない。
断言は出来ないが、人民元を代表とするアジア通貨(勿論、円も含む。)に通貨シフトの戦略を変える可能性はある。
先週もちょっと触れたが、ドル安が続き、ユーロが頭を打って(そんなに生易しいものではなくて、ユーロが結構下がる?)、人民元と円が強くなることもあるかも知れない。

         ドル高・円安になったが、割合達観している塾長。

p.s.
こういう相場が難しい時こそ、“癒し”が必要だと思って、はなの写真を載せました。

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2008年4月14日 (月)

その道の達人。

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毎週火曜日に、月曜日までの約6ヶ月間の日経平均&米国10年債の利回りとドル・円の相関を面白く表したチャートをブログに掲載していたが、どうもピントがずれて、綺麗にならない。
細かい数字や線を写そうと近くで撮ると、ピンボケになってしまうのである。
ブログの読者から、アイディアを頂いた。
“カメラのメニュー・ボタンを押すと、マクロと書いたチューリップ・マークがあるでしょ。それにして撮ると、接写が出来ます。”というものである。
やってみた。
大成功。
先週のブログの写真は、綺麗でしょ!
“へーえ。達人は凄いな!”と感心したが、その他にも皆さん方から色々なアドバイスを頂いた。
ただ、如何せんよく理解出来ない言葉が多いし、自分が使いこなせる訳は無い。
そもそもマニュアルが詳し過ぎて、読んでいて嫌になってしまい、途中で、“まあ、いいか。普通の写真を撮るのに支障は無いわい。”と変に妥協して、怠惰になってしまう。
実は、あの後カメラのマニュアルを見直してみると、マクロにしなくてもシャッターを半分押すと、近かろうが、遠かろうがカメラが焦点を合わせてくれる。
上の写真はそのハーフ・シャッターで撮ったもの。
車はもっとひどい。
塾長は、プリウスとフェアレディーZ・380RSの2台を所有しているが、各々マニュアルが3冊ずつある。
厚さにして2台分で約6センチもある。
これを総て読んで理解して、完璧に使いこなせると思います?
車の“取扱説明書”はちゃんと読まないと、安全に車が運転出来ないから、まあこれは読むが、“ナビゲーション・システム”とか、“マルチ・システム”なんて一回も目を通していない。
で、別に困ったことは無い。
さて、こういった物、或いは車を操作する時に、総てを理解して、完璧につかいこなせる“達人”になる必要はあるのであろうか?
恐らく、付いている折角のFacilities.=(利器)の20%くらいしか使い切っていないと思うが、別にどうってことはない。
“え、こんな使い方もあったのか?”とか、
“え、こんなものも付いていたのか?便利だなあ。”ということはあろうが、別に不自由を感じなければいいではないか?
カメラや車は、総てを理解していなくても何とか操作出来るからいいが、PCや携帯電話、最近手に入れたi PODなどは、これはもう全くお手上げ。
ちょっと操作を間違えたり、やり方を理解していないとうんともすんとも言ってくれない。
これは、もう達人のお教えを請うより他はない。
そして、塾長は素直に“ご免なさい。チンプンカンプンです。2時間あれやこれややりましたが、全く動きません。どうぞ、お助け下さい。”と頭を下げる。
そして、今回の塾長の“接写出来ない問題”のように、達人は数秒で問題を解決してくれる。
総ての問題の解決を達人に委ねる積もりは無いが、センスの無い素人が無駄な時間を費やしてグダグダするよりは、分からない時は達人に任せればいいんだなと思う。

さて、為替には中々達人は居ない。
塾長のように、為替取引経験の長いディーラー、或いは元ディーラーはゴマンといようが、達人は少ない。
商品そのもの(為替取引のやり方も含め)は極めて単純で、理解するのは難しくはないが、応用が多過ぎる。
決まったマニュアルが無い。
G7共同声明で、“主要通貨の急激な変動が経済や金融の安定に与える影響を懸念。引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力する。”とあるが、これをどう理解し、評価するか?
ドル・ブルは、
-“良し、良し。7年7ヶ月ぶりにG7において、為替相場の急激な変動に対しての懸念を表明した。適切に協力ということは、もしかして強調介入でもするのかな?これで、ドルの下落に歯止めが付くだろう。”と思い、
ドル・ベアは、
-“全く、Nothing new.=(何も目新しいものは無い。)
懸念するのは当たり前。
で、何をどうするんだ?
トリシェは、“ドルの金利がさらに下がり、ユーロの金利が下げられないのなら、ドルがユーロに対してさらに下がっても仕方ないだろう。”と思っているし、アメリカは口先では“強いドルはアメリカの国益である。”と言いながら、実はドル安が外需を引っ張って景気浮揚を助けることは重々承知している。と冷ややかに見ている。
そして、このドル・ブル、そしてドル・ベアとも為替の長い経験者であるが、決して達人ではない。
どうしてか?
だって、どちらとも達人として完璧なアドバイスを他人に出来ないではないか?
そもそも、完璧で正しいアドバイスなんて無い。
“いいから、もうここで損切りをしなさい。”とアドバイスをして逆に行ったら恨まれるし、アドバイス通りに切って、“ああ良かった。”と思っていたら、直ぐに相場が反転して元の木阿弥どころか、“何もしなければ良かったのに。”と思うことはしょっちゅう。
そうですよね。
皆さんも、決して為替の達人になろうなどと考えないで、難しいところは人に任せて、“いいとこ取り”だけすれば結構!
そして、分からないことはどんどん“経験者”=(決して達人ではない。)に質問すれば宜しい。
多くの場合、その分からないことはそんなに難しいものではなく、経験者は直ぐに答えてくれる。
但し、それがPerfect solution.=(完璧な答え)かどうかは保証は無い。
そもそも、為替にはPerfect solution.は無い。
ドルをショートにしていれば、ドルが下がればPerfect solution.
ドルをロングにしていれば、ドルが上がればPerfect solution.

結果が総て。


  とは言いながらも、何人かの為替の達人を知っている塾長。

(写真の1枚目はディジタル・カメラのマニュアル。
 2枚目は見難いが、ハーフ・シャッターで接写が出来る、との解説。
3~4枚目はプリウスのマニュアル。
そして、5~6枚目は380RSのマニュアル。実は、その他に、“380RSは暖機運転が必要です。”などの説明書もあった。)

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2008年4月 7日 (月)

優勝、おめでとう!

LPGA=(日本女子プロゴルフ)の、“ヤマハ・レディース・オープン葛城”で、山口裕子プロが優勝した。

http://www.lpga.or.jp/

おめでとう!!  パチ、パチ、パチ !!
日曜日のブログで大声援した甲斐があった。
日曜日の午後は、外為さん主催の、“東京国際フォーラム”で開催された“TOKYO GAITAME SHOW”に出演したので、生のテレビ中継を見ることが出来ず、DVDに録画していたものを帰宅してから見た。
山口プロ、優勝はしたものの、一時は危うかった。
最終日、2位に4打差でスタートし、一時はさらに2打差を広げて、6打差まで広げたらしいが、テレビ中継が始まった14番ホールでは、何とたったの1打差!
インに入って、ボギーとダブル・ボギーを二つずつ叩いて、一気に2位との差が縮まったのだ。
山口プロには悪いが、正直言って最初は“あ、これはやばい展開だぞ。”と思った。
彼女は、プロに転向して以来、最終日の最終組で13回回っている。
言い換えれば、優勝のチャンスが13回あったが、2001年に初優勝して以来、7年間も優勝から遠ざかっていた。
山口プロとは、何回か一緒に食事をしたり、また数回ゴルフのラウンドをご一緒したが、
ボーイッシュな顔立ちからは考えられないほど優しくて、いい子である。
気が弱いかどうかはよく分からないが、勝負どころで優勝争いをすると、相当緊張して自分が持っている実力が発揮出来ないということはあるかも知れない。
所謂、“緊張して上がっちゃう。”という現象であろうか。

自慢ではないが、塾長は“上がらない。”
日曜日も、東京国際フォーラムにおいてのセミナーで、千数百人の前で話をしたが、全然平気である。
テレビ中継も平気である。
一度なんかは、生番組中にコマーシャルが終わって本番が始まったのに気付かずに、携帯でメールを見ていたら、“酒匂さん、本番が始まっていますよ!”とキャスターに注意された。
素人なのに、その図々しさは、“前代未聞”であったそうな。

かくいう塾長もフツーの人の子。
ある出来事が起きるまでは、人前では“上がる。”ことはしょっちゅうであった。
あれは、確か1987年か1988年であったと思うが、東京でACI Congress=(世界中の為替ディーラーの親睦団体の国際会議)が開催された時、セミナーのコーディネーターを仰せつかった。
会場には2千人くらいの世界中からの為替ディーラーが集まり、テレビ・カメラが10台くらい前列に並んでいた。
セミナーでのスピーカーは、元財務官の行天豊雄氏、上智大学のウイリアム・クラーク教授、そしてMr.Walkman.ことソニーの創業者の一人である盛田昭夫氏であった。
お一人が45分間の持ち時間のうち、30分がスピーチ、そして15分間が質疑応答という形式でやる積もりであったが、とんだハプニングが起きた。
控え室から演壇に向かって4人で歩いている最中に、盛田昭夫氏が、“ねえ、酒匂君。悪いけど、僕は質問は受けないよ。その代わりに、ぴったり45分間話をするから大丈夫だよ。そして、直ぐに退場するよ。急用が出来たとか何とか言って、場を取り繕ってよ。”と突然仰った。
“え? どうして質問を受けないのですか?”と聞くと、“僕はスピーチで、君たち為替ディーラーのことをぼろくそに言う積もりだ。必ず頭に来て反論する奴等がいるだろうから、面倒くさいから逃げるんだよ。”とニコニコしながら答えられた。
どうしよう、と思った。
セミナーが始まるまでに後数分しか無いんですよ!
英語でやるんですよ!
段取りはすっかり頭に入れて、何を話すかはもう決めていたんですよ!
頭が真っ白になった。
壇上に上がったが、足が震えてどうしようもない。
テレビ・カメラのライトが一斉に点灯されて、前が一切見えない。
一番目のスピーカーである盛田昭夫氏の紹介は出来たが、スピーチのタイトルを紹介するのを忘れた。
盛田氏がこちらを向いて何か冗談を仰って、会場がどっと沸いているのに、すっかり上がってしまって何も聞こえない。
手もぶるぶる震えている。
数分経って、タイトルの紹介を失念したことに気付いた。
“しまった。 どうしよう。”
10分くらい経って、何とか落ち着いてきた。
会場にいる、顔見知りのディーラーにも気付くようになった。
盛田氏の流暢な(決して発音は綺麗ではなかった。)英語も、総て耳に入りだした。
“うーん、大失敗をやらかしたけど、盛田さんが悪いんだ。あんなことを数分前に言うなんて、お人が悪い! そうだ、俺はプロの司会者ではない。日本・フォレックス・クラブを代表して、ボランティアで引き受けただけだ。 失敗したって別に失うものは無いや。What the hell !!=(どうってことは、ねーや!)
スーッとした。
もうこうなったら、こちらのもの。
盛田氏のスピーチのポイントは、“我々物づくりをする者は、寸暇を惜しんでコスト削減に励み、いい商品をなるべく安く提供しようと努力している。 一年掛けて、5%のコスト削減をすることだって大変なんだ。 ところが、あんたら為替ディーラーはマネー・ゲームをやって、たった5分間で為替の価値を変えて儲けようとしている。 けしからん!”というものだった。
まあ、時はプラザ合意の後、どんどん円高が進んでいる時であったから、面白くなかったのであろう。
案の定、会場がざわめいた。 でも、皆笑っている。 正に、その通りだ、と皆思ったのであろう。
結局、約束どおりぴったり45分間のスピーチを終えられた。
当初のスピーチのタイトルは忘れたが、極めて真面目なものであった。
よし、一発リカバリー・ショットをやってやろうと決め、盛田氏がスピーチを終えられた後、“最初にスピーチのタイトルをご紹介するのを忘れて失礼しました。でも、本当のタイトルは、*FX Dealers ruin Manufactures 1 year effort within 5 minutes.*=(為替ディーラーは、物づくり手の1年の努力を5分でパーにする。)ですね、と言ったら再び会場が沸いた。
そして、盛田氏が直ぐに退場されたが、塾長のところにわざわざいらして、“良かったよ。 俺の言いたかったことを最後に一言でまとめてくれた。”と耳打ちされた。
飛び上がるほど、嬉しかった。
結局、盛田氏が退場された後は3人でセミナーを進めたが、後は楽勝。
冗談まで言えるほどリラックス出来た。
この一件以来、人前で上がるということは全く無くなった。
“どうせ、俺はアマチュアなんだからプロの司会者のようなことが出来る訳が無い。”と開き直ったからである。

恐らく山口プロはこれからも何回も優勝するであろう。
試合後のインタビューで、7年間優勝から遠ざかっていたことなどおくびにも出さずに、“また優勝を狙います!”と言い切った。
何かが吹っ切れたのであろう。
いい笑顔であった。
それともう一つ印象的であったのは、優勝を決めた瞬間、ライバル選手が集まって山口プロに、シャンパンではなくミネラル・ウォーターを頭から掛けていた。
祝福である。
山口プロは、若い女子プロなどからも人望が厚いと聞く。

これからも、益々頑張って欲しい。
            
     山口プロの優勝が、自分ことのように嬉しい塾長。

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